石山宏一の新語ウォッチング

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ジャーナリスト 石山宏一
石山先生のプロフィール  
<第157回> Updated August 6, 2018 更新日:2018年8月6日

今月の新語ファイル

和英編 デパコス department stores’ cosmetics

これは久しぶりの和英編で社会分野の新語。「デパコス」とは「デパートコスメ」とも表し、「デパート(百貨店)」と「コスメティックス(英語のcosmeticsのカタカナ読みで『化粧品』の意)」の合成語で「デパートで販売されている化粧品」を指す日本での新語(注1)。この言葉は昨年(2017年)初頭に日本の10代後半から20代の若い女性が造語しネットで話題になったが、その後はそんなには目立たなくマスコミにも取り上げられなかった。しかし、最近になって隆盛を極めるコンビニ・ネット小売業界に押され低迷する百貨店業界において唯一売上げを伸ばしているのが「デパコス」とあって俄然注目をあび、日経MJ(日本経済新聞の業界紙)やNHKなど主要メデイアに取り上げられ人口に膾炙した(注2)。

それにしても「デパコス」の勢いは、あのロシアでのサッカーW杯で有名になった日本の大迫勇也選手ではないが“ハンパ(半端)じゃない!”(英語では一般には“It’s awesome!”と訳される)。日本百貨店協会によると、昨年(2017年)の「デパコス」売上げは前年比17%増の5122億円と急増し、5年間で1.5倍となった。その大半を主に10代後半~20代の若い女性が担い、それもイヴ・サンローランボーテ(Yves Saint Laurent Beaute)やシャネル(Channel)にディオール(Christian Dior)等の海外ものだけでなく、国内のSHISEIDOやコスメデコルテ(COSME DECORTÉ)等の高級品を買い漁っている(注3)。勿論、30歳代から50~60歳代の女性も多く訪れており、有名ブランドがそろう名古屋の老舗デパートでは1日2000人の客がこだわりの化粧品を購入している。東京の松屋銀座本店では20代の購入客が17年では前年比2割増、伊勢丹新宿本店では3割増になっている(注4)。

ちなみに筆者は男性なので、「デパコス」には家内(60歳代)や娘(30歳代)と一緒に2、3度しか行ったことがないが、「デパコス」は必ずデパート一階入り口の目立つ真ん前にあり、各々のテナントには相談窓口(カウンター)が設けられ、ブランド物をはじめ高級品から低価格品まで色々売られ、専門店員が各々の客の要望に応じて化粧品を選定し、試し、提供している。

この中で「低価格品」には「プチプラコスメ」という別の新語が使われている。「プチプラ」は英語のpetite price(発音は「プチットプライス」で「低価格」の意)の省略形で、あまり持ち合わせのない客にもお手頃価格で現在トレンドになっている「クボメイク」にも様々なカラーが試せるようになっている(注5)。筆者のような男性にはまったく見当もつかない世界である。

デパコス」の英訳語であるが、これは日本での新語中の新語であるので訳例はいくら探してもなく、しかたがないので筆者の独創の英訳語で恐縮するが、直訳のdepartment stores’ cosmetics を適訳語とした(注6)。所有格(apostrophe= ’s)を使わないでcosmetics at department stores としてもよい。なお、下記の訳例は上記の訳例そのものではなく、department stores とcosmeticsが使われた英語記事の例である。この2つの記事を読むと米国でのデパートの化粧品販売は日本と違って、昨年初夏の時点では値下げ(discounted)しなければいけないほど景気が低迷したことが窺われる。

[訳例1]としては Fashion Network (online) が“Department stores add cosmetics to discounted offering”と題した記事で “…While it’s important to point out that department stores have previously dabbled with the idea of putting cosmetics on sale, anything in the cosmetics department area…was usually excluded…” とdepartment stores とcosmeticsを使用(注7)。

[訳例2]としてはConsumerist (online) が “Department Stores Try Discounting Prestige Makeup For The First Time” と題した記事で “How desperate are department stores to get shoppers in the door and spending money? Chains including Lord & Taylor, Macy’s and Bloomingdales are taking the unusual step of actually discounting their cosmetics….” として department stores と cosmetics を使っていた(注8)。

注1) 日経MJ(紙版)2018年7月8日、1面「デパコス アガります/10~20代女性、百貨店へ」とNHK総合テレビ2018年6月15日午後10:45~11:10(再放送6月23日午前11:25~11:50)、「ドキュメント72時間/百貨店フロアの女たち」(http://www4.nhk.or.jp/72hours/x/2018-06-15/21/31897/1199220/) 参照。ちなみに「デパコス」の「コス」のことであるが、英語のcosmeticsは「コズメティックス」と発音し、正確には「コス」ではなく「コズ」とスの濁音になることに注意。
注2) 上記NHK記事参照。
注3) 上記日経MJ記事参照。
注4) 同上。
注5) 上記日経MJ記事参照。「クボメイク」とは Twitter の(ハッシュタグ)#クボメイクで有名なヘアメイクアーティスト・美容師の久保雄司(くぼゆうじ)氏が考案した女性のメイク全般を指す。「プチプラコスメ」については「はてなキー-ワード(オンライン版)、「プチプラコスメ」(http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%C1%A5%D7%A5%E9%A5%B3%A5%B9%A5%E1) 参照(2018年7月24日時点)。
注6) 最新オンライン辞典の「英辞郎」(アルク)や Weblioには「デパコス」の項目すらなかった(2018年7月24日時点)。
注7) Fashion Network (online), July 12, 2017, “Department stores add cosmetics to discounted offering” (http://us.fashionnetwork.com/news/Department-stores-add-cosmetics-to-discounted-offering,849363.html#.W01LpMIUklY) (Seen on July 24, 2018)
注8) Consumerist (online), July 10, 2017, “Department Stores Try Discounting Prestige Makeup For The First Time” (https://consumerist.com/2017/07/10/department-stores-try-discounting-prestige-makeup-for-the-first-time/index.html) (Seen on July 24, 2018)




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