石山宏一の新語ウォッチング

いまいちばんホットな英語の新語を、皆様にいちはやくお届けします!

桐蔭横浜大学客員教授 石山宏一
石山先生のプロフィール  
<第140回> Updated March 6, 2017 更新日:2017年3月6日

今月の新語ファイル

和英編 コト消費 experiential consumption

コト消費」とは昨年年間2403万と過去最高を記録した訪日外国人 (inbound tourists)、特に中国人の「爆買い」に代表されるお土産品購入等の「モノ消費」(=買い物中心)に対するもので「女性の和服を着る等の“着付け体験”や、日本の人気アニメのモデルになった場所を巡る“聖地巡礼”等の日本文化や、日本的な丁寧な“靴磨き”等の多様なサービスを体験することなどの“コト”への消費」を指す新語(注1)。つまり、炊飯器などの物品の入手、所有を目的とする「モノ消費」とは異なる文化やサービスの購入による体験を重視する消費形態を指す造語である。この新語は昨年初頭にネットなどで話題となり、最近になってNHKや日本経済新聞等の主流マスコミも扱ったため取り上げた(注2)。

この「モノ消費」から「コト消費」へのシフトは鮮明だった。特に、このシフトの傾向は消費意欲が高い外国人のシニア層に見られる。「コト消費」は具体的に次の三つに分類される。第一の「文化体験」では日本らしさにふれる体験が人気で、その代表格が「着付け体験」。ネットのSNSへの投稿では大阪、京都(特に伏見稲荷大社)、奈良などの寺社での着物を着ての観光の様子が多く見られる(注3)。第二は人気アニメの「聖地巡礼」で、特に大人気なのが北海道の「北幌町」や「千歳市」であり、「北幌町」は人気アニメ「君に届け」の舞台で、「千歳市」の空港ターミナルには外国人にも有名な人工の歌手初音ミクのショップやミュージアムがある(注4)。第三としては「文化体験」で、その代表例は東京・渋谷での「ギャルメイク」や、色々な制服を着て演技する「コスプレ」や有田焼などの「陶芸体験」、東京・秋葉原での女性向き「エステ」等が挙げられる(注5)。

こうした「コト消費」のシフトが伸びている理由としては訪日リピーターの増加が考えられる。観光庁によると昨年10~12月期の訪日客の内、初めて訪れたのは約4割で、6割以上が2回以上、10回以上も14%に上った(注6)。これからも訪日外国人の多様な「コト消費」は伸びると予想される。

コト消費」の英訳語であるが、訳語を色々調べ検討した結果、experiential consumptionが適訳語となった(注7)。つまり直訳の「経験的消費」と訳出したわけである。experiential(発音は「エックスペリエンシャル」でエにアクセント)とは experience(経験)の形容詞で、「経験に基づく」「経験則」を意味する。experiential は元来学術用語で、experiential の代わりに experience-based や value-based を用いても通じる。

訳例としては The Association for Consumer Research(online) が“Elements of Experiential Consumption”と題した記事で“An exploratory study was taken to uncover the elements of experiential consumption...”と experiential consumption を使っていた(注8)。また、Washingtonpost.com (online) が“How the natural birth industry sets mothers up for guilt and shame”と題した記事で“...as Markellas Rutherford and Selina Gallok-Cruz explain in their 2008 paper “Great Expectations: Emotions as Central to the Experiential Consumption of Birth...”と experiential consumption を使用(注9)。

注1) NHK総合テレビ(放送)2017年2月17日午後7:30~8:00、「特報首都圏:“モノ”から“コト”へ」と日本経済新聞(オンライン版)2017年1月28日、「春節商戦、コト消費シフト/人民元安で爆買い一服」参照(日経のURLは有料のため割愛した)(2017年2月28日時点)。またコトバンク(オンライン版)、「コト消費」(日本大百科全書の解説)と JapanKnowledge(オンライン版)、「コト消費」(情報・知識imidas 2016)参照(両方サイトともにURLは長すぎるため割愛した)(2017年2月28日時点)。他に日本で現在唯一の紙版新語事典の「現代用語の基礎知識2017」(自由国民社2016年刊)には「コト消費」の項目はなかった。
注2) 上記各記事照。
注3) Nightley(オンライン版)、「『モノ消費』から『コト消費』へ~最新の訪日観光事情が徹底解析します~」参照 ( http://nightley.jp/archives/6711) (Seen on Feb. 28, 2016)。
注4) 同上。
注5) 上記NHK番組参照。
注6) ロイター日本版(オンライン版)、2016年2月8日、「アングル:インバウンド需要は『コト消費』へ、地方に恩恵も」(http://jp.reuters.com/article/angle-inbound-idJPKCN0VH0RF) (Seen on Feb. 28, 2016) 。
注7) 最新オンライン辞典の「英辞郎」(アルク)と Weblio には「コト消費」の項目は無かった(2017年2月28日時点)。
注8) The Association for Consumer Research (online), “Elements of Experiential Consumption” ( http://www.acrwebsite.org/volumes/7243/volumes/v18/NA-18) (Seen on Feb. 28, 2017).
注9) Washingtonpost.com(online), “How the natural birth industry sets mother up for guilt and shame” (HPは washingtonpost.com であるがURLは長いため割愛した)(Seen on Feb. 28, 2017) .




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