石山宏一の新語ウォッチング

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ジャーナリスト 石山宏一
石山先生のプロフィール  
<第153回> Updated April 2, 2018 更新日:2018年4月2日

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英和編 swatting スワッティング

swatting (発音は「スワッティング」)とは「米国で警察に虚偽の電話通報し、SWAT と呼ばれる特殊部隊を出動させる悪質な悪戯(いたずら)」を指す新語(注1)。SWAT とは special weapons and tactics(特殊兵器戦術)の頭文字の略で、普通は team を後につけて「特殊部隊」を表す。つまり、SWAT を出動させるため、動名詞化 (-ing) したわけである。この新語は2008年初頭、米国の連邦捜査局 (Federal Bureau of Investigation (FBI) がそうした悪戯があまりにも多いため造語したとされ、2015年には英国の Oxford English Dictionary のオンライン版にも掲載されて英米ではある程度は普及したが、日本など他国には広まらなかった。しかし、最近になって米国で swatting により警察官が誤って無実の男性を射殺する事件が発生し波紋を広げたため、the New York Times 等主要メディアでも報道され、日本や他国でも取り上げられ全世界に広まった(注2)。

米国では2000年代後半から swatting が増加し、米紙ロサンゼルスタイムズによるとFBI推計で近年 swatting が米国全土で年間400件近く発生し(つまり一日一回以上)、通報者は自分が特定されないよう匿名性の高い通信アプリを使うため、犯人はほとんど捕まっていないという。過去には歌手のジャステン・ビーバー (Justin Bieber) ら著名人が標的にされるケースもある(注3)。

ここで最新の swatting事件を紹介しよう。昨年12月末に米中西部カンザス州で発生した事件ではロサンゼルス在住の容疑者が警察の緊急通報用電話番号 (911) に「父を殺害し、母と弟を人質に立てこもった」と犯人を装って通報し、同州ウィチタの住所を告げた。駆けつけた警官は玄関から出てきた男性を射殺。男性は武器を所持しておらず、通報は虚偽と判明した。容疑者は swatting の常習犯で、警察をだましては楽しむのが主な目的だったと見られ、事件後にはツイッターで事件への関与を示唆する内容を自慢げに投稿し、これがあだとなり警察に感知・逮捕され、過失致死罪 (manslaughter) で訴追された(注4)。容疑者は犠牲者とは面識がなく、「(インターネット上で争いを起こした人物が争い相手の住所として指示した)住所に swatting するように頼まれた」と説明している。これはヒドイ事件で日本でも警察はよく警戒すべきであろう。

swatting の邦訳語であるが、いろいろ調べた結果、英語のカタカナ読みの「スワッティング」を適訳語とした(注5)。説明訳の「警察に虚偽の電話通報し、SWAT と呼ばれる特殊部隊を出動させる悪質な悪戯」も考えたが、英語の元のニュアンスが出ていないし、長すぎるので採用しなかった。

[訳例]としては読売新聞(紙版)が「偽情報で無実の人射殺/警察だますいたずら 米で波紋」と題した記事で、「米中西部カンザス州で、ウソの通報で警察を呼ぶスワッティングと呼ばれるいたずら…」と「スワッティング」を訳語として使っていた(注6)。

[用例1]としては the New York Times (online) が “Fatal ‘Swatting’ Episode in Kansas Raises Quandary: Who Is to Blame?” と題した記事で、 “…Both the Wichita police and the man in the house were pawns in a hoax called “swatting” in which people report made-up crimes in hopes of creating a spectacle and getting a SWAT team deployed...” として “swatting” を使用(注7)。

[用例2]としては Washington Post (online) が “Deadly ‘swatting’ hoaxes and the dangerous conditioning of cops” と題した記事で、 “…Online gamers have said in multiple Twitter posts that the shooting of a man Thursday by Wichita police was the result of a “swatting” prank involving two gamers…” として “swatting” を使っていた(注8)。

[用例3]としては CNN (online) が “Family of man in ‘swatting death’ sues city of Wichita and police” と題した記事で、 “…Andrew Finch, 28, was shot and killed in December – a victim of what is known as “swatting,” or the making of a false police report…with the intention of luring law enforcement or SWAT to an address…” として “swatting” を使用(注9)。

[用例4]としては Wikipedia (online) が “Swatting” と題した記事で、 “Swatting is the harassment of deceiving an emergency (via such means as hoaxing an emergency services dispatcher) into sending a police and emergency service response team to another person’s address…” して “swatting” を使用していた(注10)。

注1) 上記[用例1][用例2][用例3][用例4]参照。そして読売新聞(紙版)2018年2月3日朝刊7面、「偽情報で無実の人射殺・警察だますいたずら 米で波紋」参照。そしてオンライン百科事典の JapanKnowledge や日本で現在唯一の紙版新語事典の「現代用語の基礎知識2018」(自由国民社2017年刊)には swatting の項目はない。
注2) 上記[用例1][用例2][用例3][用例4]と読売新聞記事参照。
注3) 上記読売新聞記事参照。
注4) 同上。
注5) 最新オンライン辞典の 「英辞郎」(アルク)とには swatting の訳語として「スワッティング」を掲げ、同辞典の Weblio には同項目は無かった(2018年3月27日時点)。市販の日本の紙版の英和辞典には勿論、同項目は無い。
注6) 読売新聞(紙版)2018年2月3日朝刊7面、「偽情報で無実の人射殺・警察だますいたずら 米で波紋」参照。
注7) The New York Times (online), Dec. 31, 2017, “Fatal ‘Swatting’ Episode in Kansas Raises Quandary: Who Is to Blame?” (https://www.nytimes.com/2017/12/31/us/wichita-swatting-barriss.html) (March 27, 2018).
注8) Washington Post (online), January 4,2018, “Deadly ‘swatting’ hoaxes and the dangerous conditioning of cops ”
(https://www.washingtonpost.com/news/the-watch/wp/2018/01/04/deadly-swatting-hoaxes-and-the-dangerous-conditioning-of-cops/) (Seen on March 27, 2018).
注9) CNN (online), Jan, 23, 2018, “Family of man in ‘swatting death’ sues city of Wichita and police” (https://edition.cnn.com/2018/01/23/us/kansas-police-shooting-swatting-lawsuit/index.html) (Seen on March 27, 2018).
注10) Wikipedia(online), “Swatting” (https://en.wikipedia.org/wiki/Swatting) (Seen on March 27, 2018).




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