石山宏一の新語ウォッチング

いまいちばんホットな英語の新語を、皆様にいちはやくお届けします!

桐蔭横浜大学客員教授 石山宏一
石山先生のプロフィール  
<第145回> Updated August 7, 2017 更新日:2017年8月7日

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英和編 hot desking ホット・デスキング

hot desking (発音は「ホット・デスキング」)とは hot(ホットな)と desking(主に「机」を指す desk の動詞形で一般には「内勤になる」の意)の合成語で、「職場で複数の人たちが一つの机やコンピューターを共有する他に、働く時間までも柔軟(フレックス)にし、スマートフォン(スマホ)ソフトのアプリや音声によるメッセージも共有するシステム」を指す新語(注1)。hot と desking の間にハイフンを入れ、hot-desking と表すこともある。この言葉は20年前の1997年に「デスク共有」の意味ですでに造語されていたが、当時は広まなかった。しかし、最近になって、世界でのIT企業の隆盛やスマホ等の普及により、欧米の企業や政府での職場での働き方を効率化し大改革するのが肝要となり、主流英米メディアの Financial Times, ABC News等が hot desking を頻繁に取り上げ、全世界に広まった(注2)。

hot desking の語源は米国海軍の艦艇に乗り組む軍人達の俗語 hot racking である(注3)。これは日夜、軍人達が色々な時間のシフトをする際に簡易ベッド (bunk) を共有して使うために造語し、racking とはそのシフト表を示すラック(棚、掲示板)を指す。筆者も40数年前にAP通信記者をしていたが、その際に色々なシフトを経験し、特に午後11時から翌朝の7時までの真夜中のシフトは graveyard stint(墓場仕事)と呼ばれ、近くにあるソファを共有ベッドとして仮眠をする慣習があった。

最新の報道によると、世界のIT企業のほとんどは大都市の家賃の高いビルのオフィスに職場を構えているため、コスト削減のために hot desking とよばれる新しい形態を採用している。hot desking とは十数年の昔は単に机やコンピューターを共有するだけの意味であったが、現在ではその他に働く時間もフレックスにし、他にソフトのアプリや音声によるメッセージも共有するシステムの意味になっている(注4)。最新の働き方である。

これを可能にしているのが新規に開発されたソフトや移動性機器 (mobility tools) のスマホで、時代の先端を行く会社はこれらを使って職場に一大システムを構築して机 (desk) のみならず、倉庫や会議室の管理、各自の会社への音声・動画メッーセージの仕分けやソフトの共有も行っている(注4)。例えばニューヨークにあるシティ銀行で有名なシティグループ (the Citigroup) では hot desking のオープン・シートプラン (open-seating plan) を採用し、誰もがどこのデスクにも座れるようになり、コンピューター操作も統合化し、尚且つ自分専用に簡単に変える仕様にもなっている。同じような形態の hot desking を採用している会社にはクレジットカードで有名な American Express、製薬会社の GlaxoSmithKline、会計処理の PricewaterhouseCoopers がある(注5)。スゴイ時代になったものである。

hot desking の邦訳語であるが、いろいろ調べた結果良い訳語例は無かったので、英語のカタカナ読みの「ホット・デスキング」を適訳語とした(注6)。昔の意味の「共有デスク」では新しい意味内容を含んでいないので訳語として採用しなかった。

[用例1]としては Financial Times (online) が“Apply cold logic to hot-desking”と題した記事で、“One downside of running a growing business in London is the rocketing cost of office space...One solution to escalating costs is hot-desking...”として“hot-desking”を使っていた(注7)

[用例2]としては The Telegraph (online) が“Hot-desking and activity-based work perhaps not so hot, research suggests”と題した記事で、“...The cost of offices is one of the drivers of shared-desk work arrangements, which fall into two categories: hot-desking and activity-based working...”として“hot desking”を使用(注8)。

[用例3]としては Wikipedia (online) が“Hot desking”と題した記事で、“Hot desking...is an office organization system which involves multiple workers using a single physical work station or surface during different time period...”として“hot-desking”を使用していた(注9)。

[用例4]としては The Atlantic (online) が“The No-office Workspace”と題した記事で、“...Office layouts in which workers don't have set permanent desks, an arrangement sometimes called hot desking or office hoteling, have already become the norm for workers at American Express, GlaxoSmithKline, and PricewaterhouseCoopers...”として“hot-desking”を使用していた(注10)。

注1) 上記[用例1][用例2][用例3][用例4]参照(ここでは「デスクの共有」の初期の意味以外のソフトや音声などのシステムの共有については引用されていない)。また、NHKラジオ第2放送(音声)2017年6月28日午後11:20~11:35、「実践ビジネス英語」参照。desk は主に名詞形の「机」の意味が有名だが、動詞形として、例えば We will put you to desk this time (今度は内勤にする)という風に戸外の現場ではなく「デスクワークにする」(内勤にする)の意味がある。過去形と過去分詞形、現在分詞形はそれぞれdesked, desked, deskingと規則変化する。
注2) 上記[用例1][用例2][用例3][用例4]記事参照。
注3) 上記NHK記事参照。[用例3]記事参照(ここでは引用されていない)。
注4) 同上。
注5) [用例4]記事参照。
注6) 最新オンライン辞典の「英辞郎」(アルク)は古い意味での訳語として「ホットデスキング」を挙げていたが、同辞典の Weblio には hot desking の項目は無かった。最新の英英辞書の権威とされる Webster's New World College Dictionary (Fifth Edition) には紙版(2016年刊)もオンライン版にも hot desking の項目は無かった。日本の紙版の英和辞典には昔の意味の「デスクの共用」の訳語はあったが、新しい意味の訳語はない。
注7) Financial Times (online), June 6, 2016,“Apply cold logic to hot-desking” (https://www.ft.com/content/6ef8f302-28d3-11e6-8b18-91555f2f4fde)(有料) (Seen on Aug. 1, 2017).
注8) The Telegraph (online), March 7, 2017,“Hot-desking and activity-based work perhaps not so hot, research suggests” (http://www.telegraph.co.uk/business/ready-and-enabled/the-future-of-flexible-working/) (Seen on Aug.1, 2017).
注9) Wikipedia(online),“Hot desking") (https://en.wikipedia.org/wiki/Hot_desking) (Seen on Aug. l, 2017)
注10) The Atlantic (online), Dec. 15, 2015,“The No-office Workspace”) (http://www.abc.net.au/news/2017-04-12/hot-desking-activity-based-work-not-so-hot-research-suggests/8438664) (Seen on Aug.1, 2017)




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