石山宏一の新語ウォッチング

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桐蔭横浜大学客員教授 石山宏一
石山先生のプロフィール  
<第124回> Updated November 9, 2015 更新日:2015年11月9日

今月の新語ファイル

和英編 ブラックバイト a wicked part-time work

これは2年半前に書いた「ブラック企業」(第95回目)の派生語である(注1)。「ブラックバイト」とは「ブラックアルバイト」の略語で、「ブラック企業等が大学生らに学業とは両立できない長時間の労働を強いたり、ノルマを達成しないと自腹で買わされたり、あげくに賃金の未払いがあったりする苛酷なアルバイト」を指す新語(注2)。数年前から発生して問題視されており、大学なども注意を呼びかけていたが、昨年4月に政府(厚生労働省)が本格的に警鐘を鳴らしたために主流マスコミも取り上げ、一気に広まった(注3)。2014年に大内裕和氏(中京大学教授)がフェイスブックで、「ブラック企業」になぞらえて「ブラックバイト」と命名したとされる。

最近の報道によると、「ブラックバイト」の実態は苛酷である。これは学生アルバイトの責任が増え、「バイトリーダー」などの役職に就かされ、会計やバイトの新規採用など店舗の全ての業務に責任を負わされるはめになったからである。例えば、ある有名なコンビニ店では「希望した日・時間を無視してシフトが組まれたり」、「有給休暇が取れない」、さらに「授業中やゼミナールの最中に呼び出しをかけたり」、「顧客のクレームやアルバイトの欠員の補充をしたり」することが頻繁にあるという(注4)。

この「ブラックバイト」が広がった要因としては主にパートやアルバイト、派遣などの非正規雇用に頼る企業が近年、増大したことがある。つまり、人件費の削減のために、かつては正社員だけがやっていた責任の重い仕事が、学生バイトのような低賃金の非正規雇用労働者にも押しつけられるようになった。また他の要因としては、大学の授業料の高騰、大学生の親の収入が減少したこと、奨学金の未整備なども挙げられよう(注5)。この「ブラックバイト」は社会問題化しており、これに対処するために「ブラックバイトユニオン」や「首都圏学生ユニオン」という、学生が加入する労働組合が結成されている。ヒドイ時代である。

ブラックバイト」の英訳語であるが、色々調べた結果、よい訳語がなく、例によって友人の英米記者と相談した結果、a wicked part-time work(可算名詞)が適訳語となった(注6)。wickedとは「邪悪な」「ひどい」の意味で、代わりに (an) evil, dirty を使ってもよい。part-timework の代わりに side jobや moonlighting でもよい。訳例としては見つからなかったが、The Japan Times が “A dark force targets youth at their jobs" と題した記事で “In the ongoing discussion about workplace abuse, the media has advanced yet another new term. “Black baito” modifies the already popular phrase “black kigyou,"...“Baito" is an abbreviation of arbeit, the German word that in Japan stands for part-time work..."と書き、「バイト」をpart-time workと訳していた(注7)。

注1) 「ブラック企業」は、本コラムで2013年5月13日に掲載され、拙著『「歩きスマホ」を英語で言うと?-時事語・新語で読みとく日米の現在(いま)』(小学館新書、2015年10月刊)61頁に収録されている。バックナンバーは現在、残念ながら当サイトからは削除されており、アクセスできない。
注2) 『読売新聞』(紙版)2015年8月22日夕刊最終版、13面「ブラックバイト実態調査」、『朝日新聞』(紙版)2015年4月22日朝刊最終版、1面「ブラックバイト横行」参照(オンライン版はhttp://www.asahi.com/articles/ASH4N6537H4NULFA028.html)。また、日本で現在唯一の紙版新語事典の『現代用語の基礎知識2015』(自由国民社、2014年刊)57頁「ブラックバイト」参照。他に、オンラインフリー百科事典『ウィキペディア』の「ブラックバイト」参照(HPはhttp://ja.wikipedia.org/wiki/) であるが、この項目のURLは長すぎるため割愛した)(2015年11月4日時点)。
注3) 上記『現代用語の基礎知識2015』記事参照。また、オンラインの『コトバンク』、「ブラックバイト/知恵蔵miniの解説」参照(2015日11月4日時点)(HPはhttps://kotobank.jp/word/であるが、この記事のURLは長すぎるため割愛した)。なお、オンラインで、ブラックバイトユニオンのHPにある「ブラックバイトとは」(http://blackarbeit-union.com/)も参照されたい。
注4) 上記『現代用語の基礎知識2015』記事参照。
注5) 同上。
注6) 最新オンライン辞典の『英辞郎』(アルク)には「ブラック企業」の訳語はなかったが、同辞典のWeblioは、訳語として forced unpaid part-time work を挙げていた(2015年11月4日時点)。この訳語は、forcedは合っているが、unpaidは「ブラックバイト」全部がそうではないので、採用を見送った。もちろん、市井の紙版の和英辞典には同項目はない。
注7) The Japan Times (online), Oct. 18, 2014, “Black Baito/A dark force targets youth at their jobs" (http://www.japantimes.co.jp/tag/black-baito/).




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