石山宏一の新語ウォッチング

いまいちばんホットな英語の新語を、皆様にいちはやくお届けします!

桐蔭横浜大学客員教授 石山宏一
石山先生のプロフィール  
<第133回> Updated August 8, 2016 更新日:2016年8月8日

今月の新語ファイル

英和編 Brexit 英EU離脱

Brexit(発音は「ブレグジット」)とは Britain(英国)と exit(出口、離脱)の合成語(portmanteau) で「英国のEU(欧州連合)からの離脱」を指す新語。この新語は4年前に欧州のギリシャで金融危機が発生し、そのEU離脱が囁かれた時に Grexit(発音は「グレグジット」)が造語され、同時にその関連語として Brexit も同時に造語されたが、その使用は一部に限られていた(注1)。しかし、今年6月24日、英国が前日実施した国民投票によりEU離脱が決定し、世界的に金融・資本市場が動揺し暴落したため、Financial Times 等の主流英米メデイアも取り上げ世界的に広まった(注2)。また、Bregret(詳細後述)等の関連語も相次いで新しく造語された。

それにしても、Brexit による株式等の金融・資本市場の動揺は凄まじかった。日本では日経平均株価が6月24日、1,286円(8%)も暴落し1年8か月ぶりの安値をつけた。米国ではニューヨークのダウ平均株価が610ドル(8%)暴落し、欧州では英国株をはじめ、スペイン株やフランス株の下落幅が一時10%を超えた。また世界的にマネーは比較的「安全資産」とされる円や金に向かい急騰し、通貨市場では英国ポンドが対円で一日に160円台から20円も下落し、また対米ドルでも2円近く下落した。また、金の国際価格は約2年ぶりの高値をつけた(注3)。また、英語を母国語とする英国がEUを離脱することにより、今まで英語を公用語の一つとして使用してきたEUで英語を疎んじる動きも広まっている(注4)。筆者としてはこの Brexit は政治的、経済的、外交的、安全保障的等あらゆる観点から見ても英国とってデメリットがメリットよりも多く、非常に理解に苦しむ判断と思う。

そして、皮肉なことに Brexit が決定した後に、過半数(52%)を占めた離脱派から離脱に投票したことを「後悔している」との意見が続出し、ツイッターでは Bregret や Regrexit の関連新語が造語されている(注5)。Bregret(発音は「ブリグレット」)とは Britain(英国)と regret(後悔)の合成語で「英EU離脱後悔」の意で、Regrexit(発音は「リグレグジット」)は regret(後悔)と exit(離脱)の合成語で同じく「英EU離脱後悔」を意味する新語である。そんな後悔をするくらいなら最初から離脱反対を選択すべきであったのに、本当に「後悔先に立たず」である。

Brexit(不可算名詞)の邦訳語であるが、色々調べた結果、上記のように意訳の「英EU離脱」を適訳語とした(注6)。また「英国のEU離脱」あるいは「英国EUからの離脱」と格助詞「の」あるいは「~からの」を入れた訳語も考えたが、くどいしパンチ力が無いと判断し採用しなかった。[訳例]としては日本経済新聞が離脱決定直後に「震える世界/英EU離脱」と題したコラムを掲載した(注7)。

[用例1]としては Financial Times (print) が “Sell-off targets sterling and financial stocks as London tries to calm markets.” と題した記事で、“The financial fallout from Brexit intensified yesterday, battering global shares and sterling, with investor sentiment soured by the prospect of weaker global growth and an extended period of political uncertainty...” として“Brexit”を使用していた(注8)。

[用例2]としては The Wall Street Journal Asia (print) が “Profiting from Volatility”と題した記事で、“...The U.S. stock market's swoon Friday and Monday, after Thursday's Brexit vote, sent the CBOE volatility Index or VIX, to a four-month high...” として“Brexit”を使用(注9)。

[用例3]としては Macmillan Dictionary (online) が“BuzzWord/Brexit”と題した記事で、“...Brexit... NOUN (UNCOUNTABLE) the situation of the United Kingdom leaving the European Union...”として“Brexit”を辞書の項目としていた(注10)。

注1) Grexit は本コラムをまとめた拙著『「歩きスマホ」を英語で言うと? 時事語・新語で読み解く日米の現在(いま)』(小学館新書、2014年刊)126頁に収録されている。Grexit は「ギリシャEU離脱」と訳され、EUとは European Union(欧州連合)の略語。Grexit とは勿論 Greece(ギリシャ)と exit(出口、離脱)を合わせた合成語。
注2) 上記[用例1][用例2][用例3]参照。
注3) 日本経済新聞(紙版)2016年6月26日朝刊、1面「英、EU離脱を選択/欧州分裂 世界に打撃」参照。Also see Financial Times (print), June 25-26, 1916, p.1, “Britain breaks with Europe/Cameron quits, sterling plunges and Scotland hints at independence vote”
注4) Wall Street Journal Asia (print), June 28, 1916, p.A4, “After‘Brexit,’ English Language Faces Its Own Sortie.”
注5) 産経新聞(紙版)2016年6月29日朝刊、3面「広がる新造語/#Regrexit#Bregret /離脱派後悔『嘘を信じた』」と日本経済新聞(紙版)2016年6月28日朝刊、7面「英『後悔』の新造語飛び交う」参照。
注6) 日本で最新オンライン辞典の一つである「英辞郎」(アルク)には Brexit の項目は無かったが、同辞典の Weblioは「(主な意味)イギリスがEUを脱退すること」と訳していた(両方とも2016年8月2日時点)。同様に、市井の紙版の英和辞典には勿論 Brexit の項目はない。
注7) 日本経済新聞(紙版)2016年6月25日朝刊、1面「震える世界/英EU離脱」参照。
注8) Financial Times (print), June 28, 1916, p.1,” Sell-off targets sterling and financial stocks as London tries to calm markets”
注9) The Wall Street Journal Asia (print), June 29, 2016 ,p.1, “Profiting from Volatility”
注10) Macmillan Dictionary (online), “BuzzWord/Brexit” (http://www.macmillandictionary.com/buzzword/entries/brexit.html) (Seen on August 2, 2016)




本を探す

Google

サイト内 Web全体

Category(書籍カテゴリー)

  • 英語

    • 英和・和英辞典
    • その他英語辞典
    • 図解辞典
    • TOEIC
    • 英単語
    • 児童英語
    • コーパス
    • 英語学習法
    • その他語学書
  • 中国語

    • 辞典
    • 語学書
  • 韓国・朝鮮語
  • イタリア語
  • フランス語
  • ドイツ語
  • スペイン語
  • ポルトガル語
  • ロシア語
  • アラビア語
  • タイ語
  • その他の言語
  • 一般書

アプリ版やり直し英語 1日1問!

親子で辞書テク