石山宏一の新語ウォッチング

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桐蔭横浜大学客員教授 石山宏一
石山先生のプロフィール  
<第136回> Updated November 7, 2016 更新日:2016年11月7日

今月の新語ファイル

英和編 blockchain ブロックチェーン

blockchain (発音は「ブロックチェーン」)とは現在世界中で広まりつつある仮想通貨ビットコイン (bitcoin) の根幹技術で「ブロックと呼ばれるインターネットでつながった多数参加者が物や預金などの資産の取引記録をチェーン化して共有し、その取引データの改ざんを困難にする技術」を指す新語(注1)。これは筆者がその存在は感知していたが、その技術内容が難解で書きあぐねていた。

しかし、この技術によりビットコインでの取引が可能となり、世界中の銀行などの金融機関同士の送金が飛躍的に簡単となり手数料が激減するため「金融革命」の引き金になると言われている。この新語は2009年に造語され、その後ビットコイン取引が拡散するにつれて世界中に広まり、日本の最大の銀行である三菱東京UFJ銀行が今年7月にブロックチェーンを利用した米国最大のビットコイン取引所と資本提携して日本の銀行業界に激震を起こし、Financial Times や The New York Times等の主流英米メデイアも話題にしたので、今回取り上げた(注2)。

この blockchain の技術は難解であるので、ここで詳しく説明したい。読者の皆さんも近くの銀行等に自分の口座を持ち、預金していると思うが、国内で送金したりする場合には手数料がかかり、海外に送金する場合には円からドル等へ換えるため為替や送金の手数料が必ずかかる。このブロックチェーンはこの手数料を劇的に下げるものである。この方法はインターネットの使用方法が違うためである。一般にはインターネットは自宅のパソコンなどの端末からプロバイダーと呼ばれる通信業者の一か所のサーバーに繋がり、世界とつながる。銀行等の金融業者の取引データ(会計専門用語で「(勘定)台帳」(ledger))も同様である。これを「中央集積型インターネット」と呼んでいる。

しかし、ブロックチェーンではその取引データを一か所に集めないで、その複製データを作ってブロック毎に分散・共有することで中央の管理者を不要とし、またハッキングや事故による情報システムの停止なども起きにくくしている。つまり、各々の端末がサーバーのように世界とつながり「分散型台帳インターネット」となっている(注3)。そしてその台帳の正確さを参加者全員で保証しあっている。これが可能になったのは各々取引データをハッキング不可能な暗号に転換する技術で、この結果「ビットコイン」の根幹技術となりえたのである。また、この技術があるおかげで、各国間の銀行同士の送金の際に、中間業者 (middlemen) が完全に不必要となり、その送金手数料が劇的に削減された。あるコンサルタント会社によると、そのコスト削減幅が年間「150億~200億ドル」(約1兆500億~2兆円)に達するだろうと言われる(注4)。

そして、このブロックチェーン技術は仮想通貨のみならず、各種の契約や他の資産管理、機械の保守管理などの「IoT」(Internet of things) と呼ばれる「モノのインターネット」への応用が始まっており、世界中で革命を起こしている。しかし、この技術の実用化にはまだまだ壁がある。例えばブロックチェーンでは取引がブロック(塊)で記録されるため、時系列に記録されていない。また取引が秒単位で多量に行われる証券取引所での高速・高頻度取引には向いていない等である。それにしてもスゴイ時代になったものである。

blockchain(固有名詞)の邦訳語であるが、固有名詞のため上記のように直訳の「ブロックチェーン」を適訳語とした(注5)。この訳語には異論はないであろう。

[用例1]としては Financial Times (print) が“Bank safety and the blockchain revolution” と題した社説で、“The financial world has spent the past few years trying to decide what to make of blockchain--the automated ledger that supports the bitcoin cryptocurrency...”としてblockchainを使用していた(注6)。

[用例2]としては Wikipedia (online) が“Blockchain (database)”と題した記事で、“A blockchain--originally, block chain--is a distributed database that maintains a continuously-growing list of records called blocks secured from tampering and revision... The block chain is a technology that underlies bitcoin...”としてblockchainを使用(注7)。

[用例3]としては The New York Times (online) が“Downside of Bitcoin: A Ledger That Can't Be Corrected” と題した記事で、“There has been much discussion about the potential of blockchain, the technology underlying virtual currencies like Bitcoin, to change the world” とblockchain を使っていた(注8)

注1) 上記[用例1][用例2][用例3]参照。また、日本経済新聞(紙版)2016年9月11日朝刊、7面「広がるブロックチェーン/IT、地殻変動の足音/サーバー不要 経費1/10」参照。また日本経済新聞(電子版)2016年7月8日、「三菱東京UFJ銀と仮想通貨取引所、資本提携を正式発表資」参照(http://www.nikkei.com/article/DGXMZO04608240Y6A700C1I00000/ )(Seen on Nov.1, 2016).
注2) 上記[用例1][用例2][用例3]と上記日経記事参照。Also see Financial Times (FT) (print), Aug. 24, 1916, p.1, “Banks seek to harness blockchain technology for settlement system” and FT Executive Appointments (print), Sept. 22, 2016, p.1, “Bitcoin and blockchain: the future of money or just hype?”
注3) 上記日経記事参照。
注4) 上記日経とFT記事参照。
注5) 日本最大で最新のオンライン辞典の「英辞郎」(アルク)には blockchain の項目は無かったが、同辞典の Weblio は「ブロックチェーン」と訳していた(両方とも2016年11月1日時点)。同様に、市井の紙版の英和辞典には勿論 blockchain の項目はない。
注6) Financial Times (print), Oct. 27, 1916, p.10, “Bank safety and the blockchain revolution”
注7) Wikipedia (online) が “Blockchain (database)” (https://en.wikipedia.org/wiki/Blockchain_(database) )(Seen on Nov.1,2016). この記事には日本版があるが、極めて難解で参考にはならなかった。
注8) The New York Times (online), Sept. 6, 2016, “Downside of Bitcoin: A Ledger That Can't Be Corrected” (http://www.nytimes.com/2016/09/10/business/dealbook/downside-of-virtual-currencies-a-ledger-that-cant-be-corrected.html) (Seen on Nov.1, 2016).




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