石山宏一の新語ウォッチング

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ジャーナリスト 石山宏一
石山先生のプロフィール  
<第154回> Updated May 7, 2018 更新日:2018年5月7日

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英和編 shrinkflation 実質値上げ

これは経済分野での新語。shrinkflation(発音は「シュリンクフレーション」)とは shrink(収縮する、減少する)と inflation(インフレーション、物価上昇)の合成語(portmanteau)で「コンビニやスーパーで小売りされる商品の価格は変わらないが、その内容量(中身の量)が減少する経済現象」を指す新語(注1)。日本では「実質値上げ」「隠れ値上げ」「こっそり値上げ」「ステルス値上げ」(ステルス (stealth) とは「隠れた」の意)と呼ばれる。この新語は最初2009年に英国でお菓子メーカーMars社がチョコレートバーの値段を変えずに内容量を減らしたときに経済学者が造語したとされ、英米ではある程度は有名になったが、日本など他国には広まらなかった。しかし、最近になって日本や米国でもそうした動きが加速し、the Telegraph等主要メディアでも報道され全世界に広まった(注2)。

この shrinkflation が登場した主な理由はメーカーにとって原材料費や人件費などの生産コスト高騰の他に消費税増税や消費が低迷しているためで、その利益確保のために小売価格への転嫁をできるだけ抑えて(つまり価格は据え置き)、内容量を減少させているわけである。しかし、消費者にとっては価格が同じため、内容量の変動による実質的値上げに気がつきにくい(注3)。しかし、賢い消費者はこれを見破り、買い控えが始まりつつある。

ここで日本での最新 shrinkflation の例を紹介しよう。乳業メーカーの森永乳業は3月1日出荷分から粉末クリームの「クリープ」を値段は据え置いて容量を下げる実質値上げに踏み切った。同様に、明治は4月3日からヨーグルト2商品の容量を450グラムから400グラムに減らし、希望小売価格を10円下げた。一瞬、値下げか値上げか迷うが、1グラム当たりの単価は0.58円から0.63円となり実質値上げである。米菓では亀田製菓が4月9日出荷分から主力ブランド「ハッピーターン」や「揚一番」など6商品の内容量を減らして実質的に値上げをした。しかし、みずほ総合研究所や第一生命経済研究所の専門家は「日本の消費者は賢く、実質値上げに敏感で節約志向を高めている」と分析している(注4)。もっともな話である。
 

Shrinkflation の邦訳語であるが、いろいろ調べた結果、上記の「実質値上げ」を適訳語とした(注5)。あるいは訳語として「隠れ値上げ」「こっそり値上げ」「ステルス値上げ」を使ってもよい。直訳のカタカナ語「シュリンクフレーション」も訳語として考えたが、日本語としてもっと説明する必要があり、長くなるので今回は採用しなかった。

[訳例]としては日本経済新聞(紙版)が「こっそり値上げ 見破る消費者」と題した記事で、「亀田製菓が4月9日出荷分から…実質的に値上げする…」と「実質値上げ」の変形を訳語として使っていた(注6)。

[用例1]としては the Telegraph (online) が“‘Shrinkflation’ has hit over 2,500 consumer products over the past five years”と題した記事で、“More than 2,500 consumer products have shrunk in size over the past five years despite being sold for the same price. According to the Office for National Statistics, the so-called “shrinkflation” effect has hit items ranging from chocolate bars….”として“shrinkflation”を使用(注7)。

[用例2]としては Macmillan Dictionary (online) が“Buzzword/Shrinkflation”と題した記事で、“…the practice of reducing the size or quantity of a product but keeping its price the same or increasing it… として“shrinkflation”を使っていた(注8)。

[用例3]としては Wikipedia が“Shrinkflation”と題した記事で、“…In economics, shrinkflation is the process of items shrinking in size or quantity while their prices remain the same or increase…”として“shrinkflation”を使用(注9)。

注1) 上記[用例1][用例2][用例3]参照。そして日本経済新聞(紙版)2018年3月26日朝刊3面、「こっそり値上げ 見破る消費者/乳製品や米菓 量少なく」参照。これは余談であるが、shrink には「収縮する」の意味とは全然違う意味があることを今から50年以上も前に米国留学先の Middlebury College の学生寮 Hepburn Hall で roommate の David から教えられた。彼がある時、“I went to see a shrink today and he told me I was suffering from insomnia.”と言うのだが、その shrink の意味が皆目見当がつかない。それで日本から持参した辞書を調べたが載っていない。それで最終的にわかったのが shrink とは psychiatrist(精神科医)の意味で、元来は headshrinker(首狩り族で特殊な技術で首を縮こませる人)から由来するとの由であった。
注2) 上記[用例1][用例2][用例3]と日経新聞記事参照。最初に造語した経済学者はピッパ・マルムグレン (Pippa Malmgren) と言われる (See https://www.merriam-webster.com/words-at-play/shrinkflation-words-were-watching)
注3) 上記日経新聞記事参照。
注4) 同上。
注5) 最新オンライン辞典の 「英辞郎」(アルク)には shrinkflation の訳語として「シュリンクフレーション」を掲げ、同辞典の Weblio は訳語として「シュリンクフレーション」「実質値上げ」「隠れ値上げ」「ステルス値上げ」を挙げていた(2018年4月24日時点)。市販の日本の紙版の英和辞典には勿論、同項目は無い。日本の公共放送NHK総合テレビは2018年1月18日午後10:00~10:25に放送した「クローズアップ現代/#くいもの小さくなっていませんか/食の“スモールチェンジ”裏事情」で shrinkflation を題材にした番組を shrinkflation という単語を使わずに放送し、その新語を「スモールチェンジ」と訳していたが、これは訳語として全体を表しないため採用しなかった (See https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4087/)
注6) 日経新聞(紙版)2018年3月26日朝刊3面、「こっそり値上げ 見破る消費者/乳製品や米菓 量少なく」参照。
注7) The Telegraph (online), July24, 2017, “‘Shrinkflation’ has hit over 2,500 consumer products over the past five years”https://www.telegraph.co.uk/news/2017/07/24/shrinkflation-has-hit-2500-consumer-products-past-five-years/ (Seen on April 24, 2018).
注8) Macmillan Dictionary (online) が“Buzzword/Shrinkflation”https://www.macmillandictionary.com/buzzword/entries/shrinkflation (Seen on April 24, 2018).
注9) Wikipedia (online),“Shrinkflation”(https://en.wikipedia.org/wiki/Shrinkflation) (Seen on April 24, 2018).




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