石山宏一の新語ウォッチング

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ジャーナリスト 石山宏一
石山先生のプロフィール  
<第156回> Updated July 2, 2018 更新日:2018年7月2日

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英和編 STEM ステム

STEM(発音は「ステム」)とは 「Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字を組み合わせた言葉で、教育分野での理系科目」を指す新語(注1)。派生新語として STEM subjects, STEM education, STEM students, STEM personnel 等がある(詳細は後述)。これは1990年代後半に米国で造語され、始まった教育モデルを象徴する新語であったが、最初は広まらなかった。しかし最近になって、日本でも2020年から始まる小学校でのプログラミング教育に象徴されるように日米で初等教育、中等教育から高等教育までの教育を革命的に変える新語として、Wall Street Journal 等の主要メディアでも頻繁に載り世界に広まった(注2)。

それにしても、この STEM に対する世界の注目度は非常に高い。その理由は近年になって、世界での IT(information technology=情報技術)や AI(artificial intelligence=人工頭脳)の急速な発展でこの理系分野での教育や人材の重要性が高まったためである。特に近年AI関連で IoT(Internet of Things=モノのインターネット)が急速に普及したため、ドイツでは5年前にメルケル首相が「インダストリー 4.0」を提唱し、これが世界的に「第四次産業革命」と見なされるようになると STEM education が俄然、子供から大人まで不可欠な教育となった。ちなみに産業革命の推移として19世紀後半半に発明された蒸気機関車に代表されるのは「第一次産業革命」、20世紀前半から半ばまでの石油と電力をもとにした大量生産・大量消費のは「第二次産業革命」、そして20世紀後半からのコンピューター制御を中心としたのは「第三産業革命」と呼ばれている。

そして今回の「第四次産業革命」を推進するにあたって STEM と呼ばれる理系科目は非常に大切である。現在は産業のほとんど全てがコンピューターで動いているが、産業革命が始まった当初から STEM が重要であったことがわかる。例えば「第一次産業革命」の蒸気機関車の蒸気エンジンであるが、水を熱すれば蒸気になり、これが Science である。そしてその水をどのくらいの熱を加えればどのくらいの蒸気圧を発するのかを数値化できるのには Mathematics が必要。その蒸気圧をエネルギーとして取り出せるかは Technology で、そのエネルギーを取り出す具体的装置として蒸気エンジンを作るのが Engineering となる。つまり、最初から STEM教育は重要だったわけである(注3)。

そして現在の第四次産業革命では、現在世界が直面する様々な問題(例えば少子高齢化に伴う労働人口の急激な減少による人材不足の問題、地球の資源減少によるエネルギー問題等)の解決を図ることが期待されている。人材不足問題では例えば金融業界での FinTech(フィンテック)と呼ばれるブロックチェーン技術による決済の簡素化で劇的な人員削減が可能になるし、資源ネルルギー問題でも米国でのシェール原油抽出での劇的技術革命による資源確保が容易になった。また電気自動車や自動車の自動走行の工学技術(engineering technology)発展により交通革命が起きている(注4)。STEM は非常に重要な位置をしめているのである。

STEM の邦訳語であるが、いろいろ調べた結果、筆者の創造訳で恐縮するが、上記の直訳のカタカナ語「ステム」を適訳語とした(注5)。意訳の「理系科目」も訳語として考えたが、日本語としてダサいし英語のニュアンスが出ていないので今回は採用しなかった。派生語としては教育分野で STEM subjects, STEM education, STEM students, STEM personnel があるが、日本では「ステム科目」、「ステム教育」、「ステム学生」、「ステム人材」の訳語が使われている。

[訳例]としては読売新聞(紙版)が「銀行 求む理系」と題した記事で、「みずほフィナンシャルグループの就職活動する学生向けに配る冊子の表紙…の狙いは『STEM(ステム)』と呼ばれる理系人材だ…」と「ステム」を訳語として使っていた(注6)。

[用例1]としては The Wall Street Journal (online) が“Commentary: What STEM Students Need to Know”と題した記事で、“The U.S. is about to spend a small fortune on teaching science, technology, engineering and mathematics, or STEM…”として“STEM”を使用(注7)。

[用例2]としては The New York Times (online) が“Where the STEM Jobs Are (and Where They Aren’t)”と題した記事で、“The national priority in education can be summed up in a four-letter acronym: STEM. And that’s understandable. A country’s proficiency in science, technology, engineering and mathematics is vital…”して“STEM”を使っていた(注8)。

注1) 上記[訳例][用例1][用例2」(ここでは引用されていない)参照。また読売新聞(紙版)2018年6月20朝刊11面、「読み 書き プログラミング/今や教養 幼少期が重要/NPO法人 CANVAS 理事長 石戸奈々子さん」参照。ちなみに STEM の小文字の stem には色々な意味があり、主に名詞では「(草などの)茎、(木の)幹」、動詞では自動詞で「(from ~) ~から起こる、生える、生じる」、他動詞で「(~の流れを)止める」を意味する(『小学館プログレッシブ英和中辞典第5版』(紙版2012年刊)1921頁参照)。
注2) 同上。
注3) fabcross (online), 「STEM教育とは何か?~それはコンピュータの歴史と共に始まった~」(https://fabcross.jp/topics/stem/20170316_programming_education_01.html) (2018年6月26日時点)
注4) News Digest (online), 「第4次産業革命でもっとつながる世界」(http://www.newsdigest.de/newsde/features/7844-industrie40.html) (2018年6月26日時点)
注5) 最新オンライン辞典の 「英辞郎」(アルク)には STEM の訳語として「【名詞】《教育》科学・技術・工学・数学」を掲げ、同辞典の Weblio には最新の意味の「科学・技術・工学・数学の略語」は掲載していなかった(2018年6月26日時点)。市販の日本の紙版の英和辞典には勿論、同項目は無い。
注6) 読売新聞(紙版)2018年5月11日夕刊1面、「銀行 求む理系」/新卒採用 IT化に対応」参照。
注7) The Wall Street Journal (online), Dec 17, 2017, “Commentary: What STEM Students Need to Know” (https://www.wsj.com/articles/what-stem-students-need-to-know-1513642450) (Seen on June 26, 2018).
注8) The New York Times (online), Nov. 1, 2017,“Where the STEM Jobs Are(and Where They Aren’t)” (https://www.nytimes.com/2017/11/01/education/edlife/stem-jobs-industry-careers.html) (Seen on June 26, 2018).




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