石山宏一の新語ウォッチング

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ジャーナリスト 石山宏一
石山先生のプロフィール  
<第162回> Updated January 7, 2019 更新日:2019年1月7日

今月の新語ファイル

和英編 空男(そらだん) a male cabin attendant

空男」(そらだん)とは2年前の2017年初頭から昨年(2018年)夏までに講談社のコミック週刊誌「週刊モーニング」に連載された糸川一成(いとかわいっせい)作「空男ソラダン」が発端となったもので、女性が圧倒的多数を占める航空会社の客室乗務員 (cabin attendant=CA) の中で異色の「男性の客室乗務員」を指す新語(注1)。つまり、「そら(空=航空)」と「だん(男=おとこ)」を合わせた女性漫画家糸川の造語である。このコミックの物語は人生に絶望した男子高校生が修学旅行でたまたま出会った女性CAが生き生きと働いているのにひかれ「空男」に成長する話だが、2年前に発売されるや否や若い層にアッという間に広まり、その後インターネット上で爆発的に支持が拡大し、最近東京新聞、西日本新聞など主要メデイアでも取り上げられた(注2)。猶、この「空男」が大人気を博した結果、日本の航空会社(特に地方航空会社や格安航空会社 (low-cost carrier=LCC))が今までの方針を変更して、「空男」を積極的に採用するようになった(注3)。

それにしても、「空男」フィーバーは勢いを増している。この物語は前述した通り、人生に絶望し「今日死んでもいい」と思い詰めた高校生の空賀カケルが、修学旅行中に偶然女性CAと出会ったことから「空の世界で働きたい」と思うようになり、高卒でも採用枠のある航空会社の「空男」に応募・入社し、展開するものである。これ以上の話の顛末についての言及は避けるが、その話の面白さや「ソラダン」が女性乗務員ではできない力仕事を担い、航空テロ等機内トラブルへの対応上の優位性等から新語「空男」がブレイクしたのである(注4)。

その結果、日本の地方航空会社やLCCが積極的に「空男」を採用している。例えば北九州空港を拠点とする中堅航空会社スターフライヤー (Star Flyer) には現在CAは約160名おり、その内男性は6人だが、今年夏までに新たに6人が加わる予定だという。同社は昨年6月3日に北九州―羽田の1往復2便を漫画「空男ソラダン」と共同企画でCA が全員男性のイベントフライトを実行した。また、LCCの1つであるジェットスター・ジャパン (Jetstar Japan)(千葉県・成田市)にはすでにCAの約15%は男性が占めている(注5)。ちなみに、外国の航空会社では男性CAが目立ち、1933年発足のエールフランスでは当初の乗務員は全員男性で現在も3分の1が「空男」である。

空男」の英訳語であるが、これは日本での新語中の新語であるのでピタッとくる訳例はいくら探してもなく、筆者の独創訳語で恐縮するが「男性の客室乗務員」の直訳の a male cabin attendant を適訳語とした(注6)。 cabin の代わりに flight, また attendant の代わりに crew を使ってもよい 。この訳語には問題はないであろう。ちなみに、1950年代から1990年代央までは、「男性客室乗務員」は欧米で a steward(スチュアード)と言われ、「女性客室乗務員」は a stewardess(スチュアーデス、愛称は「スッチー」)と言われていたが、これは「性差別」を助長しているとの批判が高まり、1990年代後半から欧米では「客室乗務員」は a cabin attendant と言われ、そう訳されるようになった。

[訳例1]としては Kyodo News (online) が “Male cabin crew increasingly taking flight in Japan”と題した記事で “…In considering some possible advantages of being a male cabin attendant, helping passengers stow and unload their increasingly bulky carry-on luggage, among other physical tasks, came to mind…” と a male cabin attendantを使用(注7)。

[訳例2]としては The Asahi Shimbun (online) が “Inspired by manga, airline uses all-male cabin crew” と題した記事で “A special Star Flyer Inc. flight featured an all-male cabin crew as the airline joined hands with a popular manga series about a male flight attendant…” として a male flight attendantを使っていた(注8)。

注1) 東京新聞夕刊(紙版)2018年12月8日、8面「『空男』テークオフ/『CA=女性』」今や昔」と西日本新聞(オンライン版)2018年6月4日、「CAは“イケメン”ぞろい/スタフラが『空男ソラダン』と共同企画」 (https://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_kitakyushu_keichiku/article/421772/) 参照。
注2) 上記2新聞記事参照。
注3) 上記2新聞記事と[訳例1][訳例2](ここでは引用されていない)参照。
注4) 同上。
注5) 上記東京新聞記事参照。
注6) 最新オンライン辞典の「英辞郎」(アルク)や Weblio には「空男」の項目すらなかった(2018年12月25日時点)。
注7) Kyodo News (online), Dec. 16, 2018, “Male cabin crew increasingly taking flight in Japan” (https://english.kyodonews.net/news/2018/12/76e2f7862504-feature-male-cabin-crew-increasingly-taking-flight-in-japan.html) (Seen on Dec. 25, 2018).
注8) The Asahi Shimbun (online), June 11, 2018, “Inspired by manga, airline uses all-male cabin crew” (http://www.asahi.com/ajw/articles/AJ201806110027.html) (Seen on Dec. 25, 2018).




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