石山宏一の新語ウォッチング

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ジャーナリスト 石山宏一
石山先生のプロフィール  
<第161回> Updated December 3, 2018 更新日:2018年12月3日

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英和編 grocerant グローサラント

grocerant(発音は「グローサラント」)とは grocery(食料店、発音は「グロサリー」)とrestaurant(レストラン)の合成語で、「スーパー(ストア)やコンビニ等で購入した食べ物をそのまま店内で食べる『イートイン』(eat-in)や、色々なテナントが集まって営業する『フードコート』(food court)とは違って、主にスーパーの店内で扱う食材をその場で料理し、手早くレストランのような上質な料理を提供する新しい場所・営業形態」を指す外食分野の新語(注1)。この新語は10年前の2008年頃に米国で考案・造語されてから人気となり、その後欧州やアジア諸国にも飛び火し、日本では2008年にイタリアの大手スーパーのgrocerantが初上陸してから徐々に広まったが、欧米ほどにはならなかった。しかし、最近になって日本のスーパーも本格的に参入したため日本経済新聞や朝日新聞等の主要マスコミも報道し日常語となった(注2)。ちなみに、上記の eat-in とは2000年に日本で造語された和製英語で「テイクアウト」に対比する意味で「スーパーやコンビニ等の店内で売られている既成食品を購入し、さっと食べる簡易的なスペース」を示し、food court とは1980年代に米国で造語・展開し日本に輸入されたもので「隣接する多様な飲食店のブースあるいはセルフサービス形式のファーストフードを食する共有スペースを提供する屋内型広場」を指す。

この grocerant の広がりには目を見張るものがある。上記の2008年に日本に初上陸したのはイタリア発祥のフードマーケット&レストラン「EATALY」だが、同店が2017年に東京駅構内の商業施設「グランスタ丸の内」に本格的大型店舗を出店して大人気を集めてから、日本の大手食品スーパーも同年(17年)中に一気に参入しだした。そのスーパーとは(株)成城石井、イオンリテール(株)、オーケー(株)等である。日本での grocerant の旺盛に関するデータはないが、米国ではある調査会社(NPD Group)によると、2年前の2016年には grocerant への来店客数は24億人に上り(2008年比約30%増)、その売上げは100億ドル(約1兆1200億円、$1=\112で換算)に達した(注3)。

大手スーパーのこの大参入の理由はコンビニ(コンビニエンスストア)だけではなく、アマゾンや楽天等のネット通販との小売競争における強い危機感がある。スーパー業界は2017年の全国の既存店売上高が2年連続で減収であった(注4)。つまり、スーパーは「生き残り」のために食材(モノ)だけでなく、grocerant という新営業形態の展開で「体験」(コト)という付加価値を出して競争を勝ち抜こうしている。成城石井は「品質の高い食材をその場で提供し、旬や鮮度を感じてもらう」と話し、イオンも「非日常体験の提供が来店動機の一つとなる」としている。

例えば、高級スーパーの成城石井(横浜市)は昨年9月に東京都調布市に開業した「トリエ京王調布店」では最初からgrocerantを展開し、開業からの客数が100万人を突破し、OLや主婦、高校生から80代のシニア層も訪れている。その人気の秘密は飲食メニューのお値打ち感である。スーパーの旬の食材の調達力と食材を加工する自社工場の活用でコストを抑え、外食店で出す同等の料理より2~3割安いという(注5)。ちなみに米国の grocerant のメニュー価格も外食店の同等のものと比べると半額以下であるという。スーパーが如何に生き残りに必死かがわかる grocerant の展開である。

grocerant の邦訳語であるが、いろいろ調べた結果、上記の直訳のカタカナ語「グローサラント」を適訳語とした(注6)。直訳の「食材店レストラン」はダサいので採用しなかった。この訳語には問題がないであろう。

[訳例]としては日本経済新聞(紙版)が「本格料理スーパー店頭で/『グローサラント』広がる」と題した記事で、「食品スーパーで販売する食材を使った料理をその場で提供する『グローサラント』と呼ばれる店が増え始めた…」と「グローサラント」を訳語として使っていた(注7)。

[用例1]としては USA Today (online) が “Why ‘Grocerants’ are the new trend, taking bite out of restaurants”と題した記事で、“…The phenomenon is growing fast enough in prevalence and sophistication that the food industry coined a term for those combination grocery stores and eateries –the “grocerant.” …” として“grocerant”を使用(注8)。

[用例2]としては The Asahi Shimbun (online) が “‘Grocerant’ store-restaurant hybrids gaining ground in Japan” と題した記事で、“Shoppers in Japan are increasingly eating at “grocerants,” in-store supermarket eateries that first appeared in the United States, which sell freshly cooked meals made with ingredients sold on the premises…”して“grocerant”を使っていた(注9)。

注1) 上記[訳例][用例1][用例2」(ここでは引用されていない)参照。また日本経済新聞2018年7月28日朝刊、1面「本格料理スーパー店頭で/『グローサラント』広がる」参照。
注2) 上記の[訳例][用例1][用例2」と日本経済新聞記事参照。また、コトバング(オンライン)、「グローサラント」(https://kotobank.jp/word/%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%88-1823155)
注3) [用例1](ここでは引用されていない)参照。
注4) 上記日経新聞記事参照。
注5) 同上。
注6) 最新オンライン辞典の「英辞郎」(アルク)には grocerant の項目は無かったが、同辞典の Weblio は訳語として「グローサラント」を挙げていた(2018年11月27日時点)。市販の日本の紙版の英和辞典には勿論、同項目は無い。
注7) 日本経済新聞2018年7月28日朝刊、1面「本格料理スーパー店頭で/『グローサラント』広がる」参照。
注8) USA Today (online), April 5, 2017, “Why ‘Grocerants’ are the new trend, taking bite out of restaurants”(https://www.usatoday.com/story/money/business/2017/04/05/grocerants-take-bite-out-restaurants/99723098/) (Seen on Nov. 27, 2018).
注9) The Asahi Shimbun (online), February 24, 2018, “‘Grocerant’ store-restaurant hybrids gaining ground in Japan” (http://www.asahi.com/ajw/articles/AJ201802240005.html) (Seen on Nov. 27, 2018).




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