石山宏一の新語ウォッチング

いまいちばんホットな英語の新語を、皆様にいちはやくお届けします!

ジャーナリスト 石山宏一
石山先生のプロフィール  
<第163回> Updated February 4, 2019 更新日:2019年2月4日

今月の新語ファイル

英和編 the FIRE movement ファイア・ムーブメント

the FIRE movement(発音は「ザ・ファイア・ムーブメント」)の FIRE とは financial independence(財政的独立)と retire early(早期退職する)の頭文字をとったもので、それに movement(動き)をつけ「早期に財政的(経済的)に独立し、退職する動き」を指す社会分野の新語(注1)。early(副詞)が後ろにあるため financial independence と retire 両方にかかる。また FIRE は全部大文字で「火事」を意味する小文字の fire にならない点に留意。この新語のコンセプト(考え)は2010年代からあったが、この新語そのものは最初に2016年にブログで造語され、すぐに主にミレニアル世代(1989年~1995年生まれ、詳細後述)に支持されたが、最初はその動きは同世代内に限られていた(この動きはすでに特定されているため、前に定冠詞 the がついている)。しかし、最近になって英米で BBC 等や日本の日本経済新聞や TBS ラジオ等の主要マスコミも報道し、世界的に広まった(注2)。

広まった理由はこの the FIRE movement の考えが2014年にあのダボス会議で「世界的に新しく消費を牽引する」とされたミレニアル世代に特に強い影響を与えたためである。つまり、ミレニアル世代とは1989年~1995年に生まれた世代(日本では平成初期)で団塊ジュニア世代の子供と重なる。この世代の両親は筆者のように第2次世界大戦後に生まれ、子供を育てるため、高校・大学卒業後あくせく定年(60歳代)まで約40年間必死に働き、夫婦二人で退職後、住宅ローンを払った自宅で月額約22万円(約2000米ドル)で平均寿命(日本は80歳前後、米国は70歳前後)まで生きていく予定だ。こんな団塊の世代の姿を見てきたミレニアル世代は「こんな生殺与奪権を相手(経営者)に握られるのはまっぴら御免」と若い時から認識し、「早期に、できれば30代、40歳代に財政的(経済的)に独立し、退職する動き」につながったわけである。これは同世代が「インターネットが生まれた時からある」最初の世代で、パソコンよりスマホやタブレットを駆使し、世界を Google 等で検索できるため知識は豊富で、情報の収集は Twitter や Facebook 等の SNS で行い駆使するので視野が広い。つまり、筆者のような団塊の世代とは違って、より「物事に通じ、新進気鋭に富み、早く独立したい」のである。

このため、早く経済的に独立するために the FIRE movement には一定のルールがある(注3)。この運動の提唱者は第一に就職したら、蓄えを多くするために生活をできるだけ質素にして副業をやる。一般的には収入の10~15%を貯めるが、それを25%に上げると理論上は3年間で1年分の退職の生活費が稼げることになる。そして第2にその間に、金融知識をつけて金融資産を毎月4%前後の複利で運用する。第3にできれば25%ではなく、50%前後を貯めて、1年で1年分の退職後の生活費を稼ぐようにする。こうすることにより、the FIRE movement の提唱者は40歳代後半に FIRE を達成できる主張する。

この主張のガイドラインが発表されたのが2010年代の前半のネットのブログである。特に Mr. Money Mustache (MMM) と呼ばれるブログが有名で、そこに Pete Adeney(ピート・アデニー)というソフトエンジニアが実践した the FIRE movement で「年間40万ドル(約4400万円)貯めて30歳代で退職した」と発表すると世界的に大反響を呼び、それが米国で超有名な Tim Ferris Show で podcast(ネット放映)されると、米国の主要メデイアが取り上げ世界的に広まった(注4)。しかし、こうした「極度の生活費の切り詰めはストレスとなる」との批判も強く、ネットでは賛否両論が盛んである。

the FIRE movement の邦訳語であるが、いろいろ調べた結果、上記の直訳のカタカナ語「ファイア・ムーブメント」を適訳語とした(注5)。ファイアとムーブメントの間に中黒(なかぐろ)をつけるのに留意。movement を「動き」として「ファイアー動き」とする訳語も考えたがダサいし、また日本経済新聞はカギ括弧つきの「『FIRE』運動」と訳出していたが、これではインパクトがあまりないのでので採用しなかった(注6)。

[訳例]としては Trend New.net(オンライン版)が「FIRE movement(「ファイア・ムーブメント」)とは?ムダを投資にかえて複利を使え!」と題した記事で、「FIRE movement(「ファイア・ムーブメント」)という言葉が、アメリカなど、海外で話題になっています…」と「ファイア・ムーブメント」を訳語として使っていた(注7)。

[用例1]としては Wikipedia (online) が “FIRE movement” と題した記事で、“The FIRE (Financial Independence, Retire Early) movement is a movement whose goal is financial independence and retiring early. The model is particularly popular among millennials…”として“the FIRE movement”を使用(注8)。 

[用例2]としては BBC (online) が“FIRE: The movement to live frugally and retire decades early”と題した記事で、“…And although these ideas have been around for many years, online communities have allowed the FIRE movement to really take hold in the past decade…”として“the FIRE movement”を使用(注9)。

[用例3]としては Market Watch.com (online) が“The stock market’s downturn could mean a painful unwinding of the FIRE movement”と題した記事で、“Is the stock market putting out the FIRE movementThe FIRE movement --financial independence, retire early-- is so mid-2018…”として“the FIRE movement”を使っていた(注10)。

注1) 上記[訳例][用例1][用例2」[用例3](ここでは引用されていない)参照。また日本経済新聞夕刊(紙版)2019年1月26日、3面「40歳で引退『FIRE』運動」とTBSラジオ2019年1月23日午前6:30~8:30放送の番組「森本毅郎スタンバイ」の中の午前8:20~8:30枠「トークファイル/ファイア・ムーブメント(渋谷和宏氏担当)」参照。
注2) 上記の[訳例][用例1][用例2」[用例3]と上記ラジオ番組と日経記事参照。
注3) [用例1](ここでは引用されていない)参照。
注4) See GIZMODO (online) 2018年11月28日、「20代、30代でリタイアする『FIREムーブメント』が流行ってる」(https://www.gizmodo.jp/2018/11/fire-movement.html).
注5) 最新オンライン辞典の 「英辞郎」(アルク)と Weblio は the FIRE movement の項目は無かった(2019年1月28日時点)。市販の日本の紙版の英和辞典には勿論、同項目は無い。
注6) 日本経済新聞夕刊(紙版)2019年1月26日、3面「40歳で引退『FIRE』運動」参照。
注7) Trend New. Net (online)2018年12月3日、「FIRE movement(「ファイア・ムーブメント」)とは?ムダを投資にかえて複利を使え!」(https://trend-new.net/fire-movement/).
注8) Wikipedia (online), “FIRE movement” (https://en.wikipedia.org/wiki/FIRE_movement) (Seen on Jan. 28, 2019).
注9) BBC (online),Nov. 2, 2018,“FIRE: The movement to live frugally and retire decades early”(http://www.bbc.com/capital/story/20181101-fire-the-movement-to-live-frugally-and-retire-decades-early) (Seen on Jan. 28, 2019).
注10) Market Watch.com (online), Jan.12, 2019, “The stock market’s downturn could mean a painful unwinding of the FIRE movement” (https://www.marketwatch.com/story/an-expected-obliteration-of-financial-assets-threatens-to-kill-fire-movement-2018-12-18) (Seen on Jan. 28, 2019).




本を探す

Google

サイト内 Web全体

Category(書籍カテゴリー)

  • 英語

    • 英和・和英辞典
    • その他英語辞典
    • 図解辞典
    • TOEIC
    • 英単語
    • 児童英語
    • コーパス
    • 英語学習法
    • その他語学書
  • 中国語

    • 辞典
    • 語学書
  • 韓国・朝鮮語
  • イタリア語
  • フランス語
  • ドイツ語
  • スペイン語
  • ポルトガル語
  • ロシア語
  • アラビア語
  • タイ語
  • その他の言語
  • 一般書

アプリ版やり直し英語 1日1問!

親子で辞書テク