石山宏一の新語ウォッチング

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ジャーナリスト 石山宏一
石山先生のプロフィール  
<第165回> Updated April 1, 2019 更新日:2019年4月1日

今月の新語ファイル

和英編
「アポ電」強殺(アポでんごうさつ)
“phone-appointment”-caused burglary and homicide

「オレオレ詐欺」もついに「『アポ電』強殺」まで凶悪化した!「『アポ電』強殺」の「アポ電」とは「アポイントメント電話」の略語で「特殊詐欺グループが前もって犯罪対象宅にあたかも約束(アポイントメント)を取るように電話をかけ、現金の存在を確認すること」で、「『アポ電』強殺」とは「そうした『アポ電』をした後で、該当宅に押し入り、脅して現金を奪い(つまり強盗をし)その上殺人まで犯すこと」を指す社会分野での新語(注1)。「強殺」とは勿論、「強盗殺人」の略語である。この「『アポ電』強殺」の新語は今年1~2月に東京・渋谷区と江東区で発生した事件の際に、マスコミで造語され、3月中旬に犯人が逮捕されるに至り全マスコミがほぼ一面トップで報道し、日常語となった(注2)。ちなみに、「オレオレ詐欺」とは「特殊詐欺の一種で、犯人グループが対象宅(ほとんどが高齢者宅)に電話をかけ、相手の孫をよそおって『オレだ、オレだ』と名乗って相手を信用させ、現金やカード・印鑑等をだましとる詐欺」を指し、10数年前に日本で発生し広がり、それが海外にも飛び火している(注3)。

それにしても「『アポ電』強殺」の手口は実にヒドイ!今年1~2月の渋谷区内で起きた事件は典型的「『アポ電』強盗」で、アポ電の数日後に3人組の男が警察官を装って高齢の夫婦宅に押し入り、夫婦を縛り上げ、現金を奪う緊縛強盗事件が2件発生した。しかし、2月28日に都内・江東区のマンションで発生した事件は殺人にまで凶悪化した。この事件では同じく3人組の男が現場マンションに侵入し、一人暮らしの女性高齢者の両手足を緊縛し、その上に口にも粘着テープで巻きつけて圧迫して殺害し、室内にあったインターフォンを奪ったとされる。これら3件の事件には共通点があり、第一にアポ電があり、次に犯人が3人組の男であり、第3に犯行の手口が住人の手足を縛り、逃走に使われた車の通行記録の一部が似通って点である。逮捕された3人はいずれも「身に覚えがない」などと容疑を否定している。

警察庁によると、この「アポ電」に関する特殊詐欺は、凶悪な強殺にまで発展しないまでも昨年から急増している(注4)。この詐欺の手口は必ず「アポ電」があった後、自宅を訪れた警察官や金融機関職員を装う人物に、銀行等のキャッシュカードをすり替えるものである。このすり替えによる被害は2017年に初めて確認され、昨年1年間の被害は1348件、被害額は18億9千万円で、オレオレ詐欺の「振り込み型」(約3億8千万円)の被害額を上回った。この詐欺の巧妙なところは相手をだましてカードを持ち去るのではなく、気づかれずにすり替えるため厳密には「詐欺」ではなく「窃盗」に該当し、普通は特殊詐欺統計には計上されない。しかし、警察庁はこれが実質的には特殊詐欺の一種と判断し、昨年から集計を始めた(注5)。くわばらくわばらである。

『アポ電』強殺」の英訳語であるが、これは日本での新語中の新語であるのでピタッとくる訳例はいくら探してもなく、友人の英米人記者に相談した結果、筆者の独創訳語で恐縮するが直訳の “phone-appointment”-caused burglary and homicide を適訳語とした(注6)。 つまり「『アポ電』が引き起こした強殺」と訳したものである。phone-appointmentの代わりにappointment-by-phone, また burglary(正式・法律用語)の代わりにrobbery(一般語)、そしてhomicide(正式・法律用語)の代わりに murder(一般語)を使ってもよい 。ちなみに「オレオレ詐欺」は一般的には“‘Hey-it’s-me’ scam”と訳されるが、米国では孫とされる人物が祖父母をだますことから“grandparent scam”(祖父母詐欺)と訳されている(注7)。

[用例]としては、読売新聞朝刊(紙版)が「『アポ電』強殺容疑3人逮捕」と見出しを付けた記事で「東京都江東区のマンションで住人…が殺害された事件で、警視庁は男3人を強盗殺人…の容疑で逮捕した。(住人)…宅には事件前、自宅にある現金の額を訪ねる『アポ電』があり…」と「『アポ電』強殺」を使っていた(注8)。

[訳例]としてはThe Mainichi (online) が“3 burglars tie up elderly couple, make off with 4 mil. yen in Tokyo after ‘appointment call’”と題した記事で “TOKYO—Three men …made off with 4 million yen on Feb. 1, a few days after the residence received a suspicious call asking if cash was available there—possibly an “appointment-call” for the burglary…”と“appointment-call”を上記の訳語の一部として使用(注9)。

注1) 東京新聞朝刊(紙版)2019年3月14日、1面「『アポ電』強殺3人逮捕」、読売新聞朝刊(紙版)2019年3月14日、「『アポ電』強殺容疑3人逮捕」、産経新聞(紙版)2019年3月14日、1面「『アポ電』強殺3人逮捕」、日本経済新聞夕刊(紙版)2019年3月16日、9面「アポ電強殺 周到な準備 裏に指示役」と朝日新聞朝刊(紙版)2019年3月14日、1面「『アポ電』強盗 男3人逮捕」参照。
注2) 上記各新聞記事参照。
注3) 東京新聞朝刊(紙版)2018年9月18日、27面「ニセ電話詐欺米国でも猛威 昨年被害額300億円超 『陪審員欠席で金必要』独特手口も」参照。
注4) 読売新聞夕刊(紙版)2019年3月18日、1面「アポ電カード標的 昨年被害19億円、金融庁名乗りすり替え」参照。また、NHK総合テレビ2019年3月23日午後9:00~10:30(放送)、「ドラマ『詐欺の子』受け子かけ子アポ電」にはこのカードすり替え手口が他の詐欺と同様に赤裸々に再現されている。NHK総合テレビではまた平日(月~金)午後6:10から6:52までの番組「首都圏ネットワーク」の「ストップ詐欺被害:わたしはだまされない」欄で特殊詐欺の色々なケースを紹介している(http://www.nhk.or.jp/shutoken/stop-sagi/index.html)。
注5) 上記読売新聞記事参照。
注6) 最新オンライン辞典の「英辞郎」(アルク)や Weblio には「『アポ電』強殺」の項目すらなかった(2019年3月26日時点)。
注7) 上記東京新聞朝刊(紙版)2018年9月18日、27面「ニセ電話詐欺米国でも猛威 昨年被害額300億円超 『陪審員欠席で金必要』独特手口も」参照。
注8) 読売新聞朝刊(紙版)2019年3月14日、1面「『アポ電』強殺容疑3人逮捕」参照。
注9) The Mainichi (online), February 1, 2019, “3 burglars tie up elderly couple, make off with 4 mil. yen in Tokyo after ‘appointment call’” (https://mainichi.jp/english/articles/20190201/p2a/00m/0na/021000c) (Seen on March 26, 2019).




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