石山宏一の新語ウォッチング

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ジャーナリスト 石山宏一
石山先生のプロフィール  
<第169回> Updated August 5, 2019 更新日:2019年8月5日

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英和編MaaS マース

MaaS(発音は「マース」)とは最初のMと最後のSの大文字を小文字にして maas とも書き、Mobility as a Service の頭文字の略語で、「自動車などのモビリティー(移動手段)を人や会社等の所有物ではなく消費されるサービスとして提供する新しいコンセプト(考え方)で、デジタル技術の進展を背景に自動運転タクシーなどの複数の交通手段を連携させる次世代移動サービス」を指すサービス分野の新語(注1)。その端的な一例として自動運転車による宅配や鉄道やバス、タクシー、カーシェアリングという異なる移動手段をスマホのアプリで一括予約して、目的地までスムーズに乗り継ぎ、料金を一括決済するサービスがある。この新語が造語されたのは2014年頃のフィンランドとされ、その後2015年に欧州に MaaS Alliance と呼ばれる団体が結成され、自動運転の急速の発展などで最近になって欧州のみならず、米国やアジアのマスコミが大々的に報道し、世界に流布した(注2)。車などの移動手段を「所有」から「利用」に変化させる大きなうねりとする象徴的な動きとされ、付随サービスを含め市場の拡大が予想される。

それにしても、この MaaS の発展ぶりには目を見張るものがある。最初(2014年)にこのコンセプトが提唱されたフィンランドでは2年後の2016年に首都ヘルシンキで MaaS Global と呼ばれる会社が市内の交通手段をつなぐ Whim と呼ばれるソフトを稼動した(注3)。このソフトは単に市内で使える交通手段の組み合わせの中から目的地までの最適ルートを検索できて、予約や決済も出来る当時としては画期的サービスだった。そしてその後、この MaaS は市内の交通手段だけでなく国内の航空機やバス、船舶、鉄道等にも広まり、次には他国にも広まっていった。現在世界においては、MaaSの中核技術となる自動運転は米国グーグル (Google LLC) 系の「ウエイモ社 (Waymo LLC)」(グーグルと同様に Alphabet Inc. の子会社)や同じく米自動車大手の General Motors Corp. (GM) が先行している。またライドシェア(自動車の相乗りサービス)は日本では禁止されているが、Uber Technologies Inc. が先陣を切った米国や中国、東南アジアでは浸透し、MaaS の土台が整いつつある。

翻って、日本でもMaaSが民間企業主導で進められており、2017年にはJR東日本を中心に MaaS 関連の「モビリティ変革コンソーシアム」が結成され、昨年(2018年)からトヨタ自動車、ソフトバンクと旅行大手のJTB等が都心地域において色々な交通手段を統合したマルチモーダル・サービス (multimodal service) を展開し始めている。例えばトヨタとソフトバンクが2018年9月に設立したモネ・テクノロジー社 (Monet Technologies Inc.) は自動運転時代を見据えた次世代移動サービスの実験を始めており、今年3月下旬に首都圏で利用客の需要に応じて乗車場所や時間を自在に変更できる「オンデマンド通勤シャトル」サービスを実験的に始めた(注4)。また今秋、JTBは自動運転技術のベンチャーと組んで、東京都内で自動運転タクシーと空港リムジンバスを乗り継ぎできる一体サービスを実験的に始める予定である(注5)。ただ日本では規制が厳しく、自動運転車両は法令上、公道の無人走行が認められていないのでこの問題をどうクリアするかが課題である。また矢野経済研究所によると、2030年の MaaSの国内市場規模が6兆3600億円に達し、PwCコンサルティング社は30年に米国、欧州、中国では同規模が約150兆円に拡大すると予測している(注6)。

MaaS の邦訳語であるが、いろいろ調べた結果、直訳のカタカナ語「マース」を適訳語とした。意訳の「次世代移動サービス」も訳語として考えたが、日本語のニュアンスが弱いし、インパクトに欠けると思い採用しなかった(注7)。

[訳例]としては 産経新聞(紙版)が 「MaaS 都内で実証」と題した記事で、「…次世代移動サービス『MaaS(マース)』の実証実験が今秋首都圏で実施される...マースで渋滞が緩和されたフィンランドでは...」 として 「マース」を使用(注8)。

[用例1]としては MaaS-Alliance (online) が “What is Maas?”と題した記事で、“Mobility as a Service (MaaS) is the integration of various forms of transport services into a single mobility service accessible on demand…” として “MaaS” を使用(注9)。

[用例2]としては Wikipedia (online) が “Mobility as a Service”と題した記事で、“Mobility as a Service (MaaS) …describes a shift away from personally-owned modes of transportation and towards mobility solutions that are consumed as a service…”として “MaaS”を使っていた(注10)。

注1) 上記[訳例][用例1][用例2」(ここでは引用されていない)参照。また毎日新聞(紙版)2019年6月18日朝刊、6面「データ革命―『移動』の市場 覇権争い」と産経新聞(紙版)2019年7月24日朝刊、12面「MaaS 都内で実証」参照。
注2) 上記の[訳例][用例1][用例2」(ここで引用されていない)参照。
注3) 日本総研経営コラム(オンライン版)、「次世代交通―自動走行ラストマイルで町をよみがえさせる(第5回)~ラストマイルモビリティとMaaS(1)~」参照(https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=32955)。
注4) 上記毎日新聞記事参照。
注5) 上記産経新聞記事参照。
注6) 上記毎日新聞記事参照。
注7) 最新オンライン辞典の「英辞郎」(アルク)は訳語として「移動のサービス化」を挙げ、そして Weblio は項目そのものが無かった(2019年7月30日時点)。市販の日本の紙版の英和辞典には勿論、同項目は無い。
注8) 産経新聞(紙版)2019年7月24日朝刊、12面「MaaS都内で実証」参照。
注9) MaaS-Alliance (online),“What is Maas?” (https://maas-alliance.eu/homepage/what-is-maas/) (Seen on July 30, 2019).
注10) Wikipediat (online), “Mobility as a Service”(https://en.wikipedia.org/wiki/Mobility_as_a_service) (Seen on July 30, 2019).




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